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第一章 デジタルマーケティングの基本

マーケティングとは

 

マーケティングの定義

公益社団法人日本マーケティング協会は 「マーケティング」 を 「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動」と定義しています。「顧客との相互理解」とある通り、マーケティングでは「買い手目線」(顧客が何を求めているか)が重要。マーケティングとよく混同される言葉に「販売(selling)」がありますが、「販売」は「売り手目線」で自分が売りたいものを売ることを意味しているため、マーケティンとは出発点となる目線が異なります。 

 

経営学の父ピーター・ドラッカーは「マーケティングの理想は、販売を不要にすること」と述べ、「自社の商品やサービスが(販売せずとも)おのずから売れる仕組みをつくること」こそマーケティングであり、そのためには何より「買い手目線」に立つことが求められます。

 

従来の代表的なマーケティング手法

マーケティングは19世紀に誕生して以来、さまざまな手法で実施され、その過程で「○○マーケティング」という言葉が多く作られました。その1つが不特定多数 (mass) に対するマスマーケティングで、代表的な手法は 「新聞」「ラジオ」「テレビ」「雑誌」の4マスと呼ばれる媒体を使った以下のようなマス広告です。

 

  • 新聞の紙面に掲載される 「新聞広告」
  • ラジオ放送で流れる 「ラジオ広告」
  • テレビ番組の前後や途中で放送される 「テレビ広告(CM)」
  • 雑誌の誌面や裏表紙などに掲載される 「雑誌広告」

 

2021年にはインターネット、Web サイトやモバイルアプリなど に掲載されるインターネット広告の広告費が4マスの広告費を超えたが、一度に大人数に訴求できる4マスのマスマーケティングは未だに根強く行われています。

まとめ
・マーケティングにおいては、「買い手目線」が大切

・マーケティングとは、商品やサービスが売れる仕組みをつくること

・インターネット広告の広告費が、2021年に4マスの広告費を超えた

デジタルマーケティングとは

 

デジタルマーケティングの位置付けと重要性

デジタルマーケティングはWebマーケティングを含む広い概念で、Web以外にもモバイルアプリやIoTなどの技術を活用します。近年、消費者の購買行動が多様化し、企業サイト、口コミサイト、ECサイト、SNSなど複数のチャネルで情報収集が行われるようになりました。 このような消費者行動の変化により、デジタルマーケティングの重要性が増しています。

 

デジタルマーケティングの特長

デジタルマーケティングは、「データ収集」と「ターゲティング(施策対象のユーザーを絞り込む)」に強みがあります。従来の新聞広告ではどれだけの読者がその広告を目にしていて、どれだけの費用対効果があったかを迅速・定量的に把握できず、ターゲティングの粒度も粗いのが課題でした。一方、デジタルマーケティングの手法のひとつであるインターネット広告では、閲覧数やクリック数、費用対効果を正確に測定可能で、ユーザー属性や行動履歴に基づく詳細なターゲティングも実現できます。これらを活用することが成功の鍵となります。

マーケティング手法 メリット デメリット
従来のマーケティング手法 ・一度に多くの人に訴求できる

・インターネットの利用頻度が低い層にも

訴求できる

・施策の成果を評価するためのデータを収集しにくい

・精密なターゲティングが難しい

・マス広告を利用する場合は特にコストがかかる

デジタルマーケティング ・データを迅速、定量的に収集しやすい

・精密なターゲッティングが可能

・コストを柔軟に設定しやすい

・インターネットの利用頻度の低い層には訴求しづらい

・ITやシステムについての知識やスキルが必要

 

デジタルマーケティングのゴールと 「KGI」

デジタルマーケティングを始める前にビジネスゴールを明確にしておきましょう。

 

デジタルマーケティングのゴールを明確化する

ビジネスゴールを明確にする デジタルマーケティングを始める前に、達成すべき目標(ビジネスゴール)を明確にすることが重要です。例として、株式会社ワコールホールディングスは、海外事業で「新規顧客の獲得」と「既存顧客のロイヤル化」をゴールに掲げています。他にも「売上の増加」「シェア拡大」「ブランド力向上」などが挙げられます。このようなゴール設定により、ツール導入が目的化してしまう問題を防げます。

 

KGIの設定 ビジネスゴールだけでは具体的な施策を検討しづらいため、KGI(重要目標評価指標)を設定します。KGIは「いつまでに何をどう達成するか」を明確にし、全員が同じ方向を向いて進めるための指標です。

 

KGI を決める

KGI設定には「SMART」の法則を活用します。

 

  • Specific(具体的)
  • Measurable(測定可能)
  • Achievable(実現可能)
  • Relevant(関連性のある)
  • Time-bound(期限のある)

 

例えば、「売上の増加」というゴールに対し、「今年度の年間売上1億円」というKGIを設定します。この目標は具体的かつ測定可能であり、期限や関連性も明確です。

KGIとKPIの連携 KGIを基に、さらに具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定することで、効果的な施策が検討できます。適切なKGIの設定はKPIを導き出すうえで重要です。自分の組織や業務におけるKGIが不明な場合は、周囲の関係者に確認することをおすすめします。

まとめ
・ビジネスゴールとは、デジタルマーケティングによって達成すべき目標のこと

・ビジネスゴールから具体的なKGI(重要目標評価指標)を決める

・KGIを決める際は、SMARTの法則というフレームワークが役に立つ

 

デジタルマーケティングの「PDCA」

 

PDCAは、Plan (計画)、Do (実行)、Check (評価)、Action (改善)の頭文字を取ったものです。デジタルマーケティングを成功させるには、PDCAを継続的に回すことが重要です。ただし、Do (実行) ばかり繰り返さないよう注意しましょう。

 

Plan (計画)

まず、KGI (重要目標評価指標) を具体化したKPI (重要業績評価指標) を設定し、ターゲットとなるユーザーを決めます。次に、KPI達成のための具体的な実行内容を決定し、戦略や施策だけでなく、スケジュールや役割分担も計画します。これらを関係者と合意形成することが重要です。

 

Do (実行)

Plan (計画) で立てた施策を実行します。例えば、Webサイトの最適化、インターネット広告の配信、SNS企業アカウントの運用などが含まれます。

 

Check (評価)

施策の実施結果を評価・検証します。計画通りに進んだか、KPIを達成できたかを確認し、正確な評価のためにデータの収集・保管とレポーティングの方法を事前に整理しておくことが大切です。

 

Action (改善)

Check (評価) の結果をもとに、改善のための仮説を立て、次のアクションを計画します。例えば、「問い合わせボタンの位置を変更すると問い合わせが増えるのでは」といった仮説を立てたり、A/Bテストを実施したりすることが考えられます。

※A/Bテスト:AとBのパターンを比較し、どちらがより効果的かを検証する手法

まとめ
・PDCAの「P(計画)」では、KPIを検討し、戦略・施策を立案する

・PDCAの「D(実行)」では立案した戦略・施策を実行に移す

・PDCAの「C(評価)・A(改善)」では、施策を評価して改善する

 

デジタルマーケティングの手法

デジタルマーケティングでは、オウンド (Owned) メディアペイド (Paid) メディアアーンド (Earned) メディアの3つを活用する「トリプルメディア戦略」が基本です。

 

オウンドメディア

自社が管理するWebサイトやメルマガなどで、ユーザーを商品購入やブランド理解へ導く役割を持ちます。主な手法にはSEOWeb接客があります。

 

ペイドメディア

費用をかけて広告を出稿し、広範囲のユーザーにアプローチする手法です。代表例はインターネット広告です。

 

アーンドメディア

第三者による情報発信を活用するメディアで、SNSや口コミ、報道などが該当します。SNSは拡散力が高い一方、炎上リスクに注意が必要です。これらを適切に組み合わせることで、効果的なマーケティングが可能になります。

まとめ
・「オウンド」「ペイド」「アーンド」のトリプルメディアで施策を実施する

・オウンドメディアは自社メディアで、他施策の受け皿になる

・ペイド・アーンドメディアは自社外のメディアで、情報拡散の要となる

 

参考文献:1冊目に読みたい デジタルマーケティングの教科書

 

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